ついに子供たちが夏休みに入った。
僕の仕事は平日休みなので、子供たちが長期休暇に入ると一緒に過ごす時間を確保出来るようになるのが嬉しい。
とは言え、休みの度にどこかに遊びに出かけるとなるとお金もかかるので、休みの日に子供たちとどう過ごせば良いのか、というのは親として悩みどころだ。
この休みをどう過ごそうか、そんな風に考えていて、ふと思い出したのが図書館の存在。
前にブログで書いたが、我が家では教養教育の一貫として子供達の読書習慣の確立を推進している。
努力の甲斐あってか、長女にはすっかり読書習慣が確立し、現在は次女にもこの習慣をつけるべく奮闘している所だ。
これまでは僕の個人的な趣味とこだわりを押し出して、「読む本は買う」という方針を貫いてきた。
それは本棚に並んでいる本はその人の趣味や考え方、価値観、好み等、その人自身を写す鏡だと思っているからだ。
しかし、読む本をすべて買うというのは中々お金のかかる話でもある。
夏休みに子供達には思い切り本を読んで欲しい、お金のことを考えると躊躇してしまう。
それなら、「借りて読む」事をすれば良いじゃないかと割り切ることにして子供達と図書館に行ってきた。
そして子供達の借りる本を見繕った後、何気なく眺めていた本棚で見つけてしまったのですよ。
山本弘著の『MM9 invasion』と『MM9 destruction』に2冊を。
山本弘著の『MM9』シリーズが面白い!
『MM9』は山本弘氏による怪獣小説のシリーズ、3部作だ。
第1作目の『MM9』を読んだのは確か2010年くらいだったかな。
設定も登場人物も好きで、一気に読んだのを覚えている。
この続編が出ると聞き、「絶対買うぞ」と意気込んでいたのだが、それから仕事が忙しくなり、2作目、3作目が発売されても買うに至らず・・・。
それが2冊とも図書館の本棚に並んでいる!
自分のことを待っていたかのように2冊揃って!
借りるしか無い!
ワクワクしながら借りて読みましたよ。
最高だった・・・。
いやぁ、さすが山本弘先生。
本当に面白かったよ!
『MM9』シリーズの面白さ
1作目の『MM9』は、なんというかウルトラマンが存在しない世界で、怪獣相手にウルトラ警備隊が頑張っているという感じの話だった(厳密には、物語の後半から終盤にかけてウルトラマン的な存在が出てくるのだけど)。
ウルトラマンのいないウルトラマンの話、要するに「ウルトラQ」のような雰囲気だ。
まあ、後半はウルトラマンの雰囲気なんだけど・・・。
『invasion』、『destruction』ではこのテイストがどうなっていくのかと思っていたけれど、面白い方向に振り切りましたね。
宇宙怪獣による地球侵略と、1作目の後半でウルトラマン的活躍を見せた美少女怪獣「ヒメ」による地球を守るための戦い。
もはや方向は完全にウルトラマンだ。
でも、それでもキチンと大人も読めるウルトラマン的なお話としてまとめているのは流石ですよ。
これが子供向けの単純な怪獣小説にならないのは設定がしっかりしているからだろう。
『MM9』シリーズを支えている設定の面白さ
MM9のシリーズを支えている基本設定、「多重人間原理」は面白い設定だと思う。
「多重人間原理」は、異なる認識に基づく異なる世界、異なる物理法則が存在しているとする理論。
作中で小型の怪獣が問題なく巨大化出来たりするのは、怪獣は神話的な法則に支配された「神話宇宙」の存在で、「ビックバン宇宙」の物理法則(人間の物理法則)の影響を受けないからという風に説明されている。
物語では、この「ビックバン宇宙」と「神話宇宙」のせめぎ合いというのが1つの大きなテーマとなっていて、
「ビックバン宇宙」の産物である科学兵器が「神話宇宙」の産物である怪獣にはあまり効果が無かったり、強大な怪獣による被害が出る事で人々がより強力に「神話宇宙」を認識するようになる。
その結果、「ビックバン宇宙」が「神話宇宙」の認識に飲み込まれて、世界の構造そのものが改変されてしまう可能性がある等、単純な怪獣小説となっていない所が良い。
またこのシリーズを支えている世界の神話解釈についての仮説も面白い。
世界の神話は元々、女神信仰を中心としたものであったが、時代の移り変わりと共に人々は女神ではなく男神を中心とする考え方に代わって行き、思想の変化と共に神話の内容が改変されていったという仮説だ。
この仮説、理論展開自体は荒いものだけど、このシリーズの特に「Ivasion」と「Destruction」で重要な位置を占めている美少女怪獣「ヒメ」の正体について、また他の惑星における神話形態を説明するの重要な伏線となっていて、面白い。
よくぞ、世界中の神話を調べてこんな説を考え出したなと感心した。
こうした設定が良くできているから、MM9のシリーズは小難しくなりすぎず、かといって分かりやすいようなご都合主義的展開でもなく、適度に理屈っぽく、またテンポ良く物語が進んで行くので読みやすい。
いわゆる本格SF小説より、敷居が低くて読みやすくて本当に良かったよ!
怪獣の話って、何となく子供っぽいイメージがあるけど、あの怪獣アンソロジー『怪獣文藝の逆襲』に迫る面白さ。
『destruction』の終わり方から見て、「ヒメ」を中心に据えた物語の続編はもう出ないだろうと思う。
ただそれならば、1作目の前半部分のような、ウルトラQの雰囲気を全面に出した作品をこのシリーズで書いて欲しいと思ったよ!
次に読むべき本は…
こんど図書館に行ったら次は怪獣つながりでウルトラマン怪獣アンソロジー『多々良島ふたたび』を探して怪獣小説をもう少し読んでみようと考えている。
久しぶりに趣味のための読書をして、読書熱が再燃しているよ!
10月には『十二国記』の新作長編が刊行されるみたいだし。
これは買って読むっきゃ無いでしょ!