アマゾンプライムに映画、実写版「バクマン」が新たに登録されていたので見てみた。
2015年公開なので3年前の作品だ。
映画は当時、それなりに話題になっていた気がする。
公開当時、気になっていたけど漫画原作の実写化は映画館に足を運ぶのがやっぱり怖いのでディスク化されてから見ようと思ってそのまま忘れていた作品。
先日、アマゾンプライムに追加されていたので見ることに。
映画、実写版「バクマン」を見てみた ネタバレ感想
原作はDeath Noteで大ヒットをした大場つぐみ、小畑健のコンビの漫画。
高校生の二人組が漫画家になり少年ジャンプでの連載、作品のアニメ化を目指すという内容だ。
漫画の方は全て読んでいるが、少年ジャンプ編集部がどのように打ち切りにする漫画を決め、新連載になる漫画を決めているのかや、ジャンプに連載している漫画家たちにとって読者アンケートはどのような意味があるのかなど、漫画制作現場におけるトリビアついて語られるのがとても面白い作品だったと記憶している。
また、主人公たちがこのような業界のルールの中で創意工夫しながら自分たちの漫画を面白く人気のあるものにしようと格闘している姿にリアルを感じるお仕事漫画でもあったなぁと思う。
映画には登場しないキャラクター
漫画の内容としては、
漫画家としての仕事の部分を中心にしながら、主人公たちの恋愛や同じ世代の漫画家の人たちとの勝負、友情などが描かれているが、当然2時間の枠組みの中でこの全てを描くことは出来ない訳で、そうすると映画化するにあたり、原作の中から様々な部分が削られる事になる。
この映画では、原作のキャラクターも随分削られてしまっている。
まず個人的に残念だったのが、高木秋人の恋人であり後に妻となる見吉香耶が出てこない事だ。
この作品の中では最高と秋人のペンネームを決めたり、ムードメーカーとしても結構重要なポジションにあったと思うのだけどなぁ。
まあ、2時間の枠の中で最高と亜豆、秋人と香耶2組の恋愛を描けないという事なんだろうけど。
香耶が出てこないので映画の中では亜城木夢叶というペンネームが出てきません。
というか、女性のキャラクターは亜豆以外は誰も出てきません。
亜豆以外の女性キャラクターをバッサリ割愛することによって、漫画の中でも主軸であった最高と亜豆の関係にフォーカスしている形だ。
時間のことを考えるとその辺の変更はかえって潔く、良かったかもしれない。
配役について
主人公2人の配役については良かったのではないかと思う。
最高役の佐藤健さんも秋人役の神木高隆之介さんも演技が上手で良かったです。
ただ、気になったのは秋人の秀才ぶりがあまり表現されていなかったように感じた事と、最高の雰囲気が硬く感じたことだ。
最高の雰囲気については、亜豆との約束に向けてガムシャラに頑張っている感じを出した結果だろうと思うのだけど、思いつめすぎていて少し怖いような感じがかなり前面に出ていたのが気になった。
漫画と実写は違うので、僕の中で漫画的表現のイメージが強すぎるからそう感じたのだろう。
亜豆役はジョジョの奇妙な冒険で由花子役を演じていた小松菜奈さんだった。
由花子役では良かったけど、亜豆役はちょっとイメージが違う感じがするんだよなぁ。
漫画の方の亜豆はホワッとしているけど、意思が強くて可愛らしい女の子というイメージだが、小松さん演じている亜豆は、意思が強いのは伝わるけど、可愛い女の子という感じではない。
何か、こう、うっすら狂気を感じるんですよ。
小松菜奈さんって何か不思議な魅力のある女優さんですよね。
ただ、亜豆役に関してはイメージがちょっと違うかな。
個人的に1番原作のイメージに忠実だったのは福田真太役の桐谷健太さんです。
漫画から飛び出したかと思うほどのベストマッチぶり。
最高でしたね。
そして、個人的に1番原作のイメージから遠かったのが新妻エイジ役の染谷将太さんでした。
新妻エイジってあんなに暗いキャラクターだったっけ?
むしろ、喜怒哀楽が漫画みたいに激しいキャラクターだと思うのだけど、どうでしょう?
原作では漫画描いている時も、もっと奇声と共に身体を動かしたりして、何か子供っぽい無邪気さがあったはずなんだけど、映画の新妻エイジは常人には理解できない天才、他を寄せ付けない孤高の人という感じで大分原作のイメージからかけ離れた雰囲気。
いやぁ、素人的に考えても新妻エイジというキャラクターは演じにくいだろうなと思うのですよ。
天才を演じるってハードルがメチャクチャ高い。
実写の映画である事を踏まえた上で、新妻エイジの天才性にフォーカスをおいて役作りをしたんだろうなと思うのですが。
ただ、漫画通りの新妻エイジをこの映画で表現したら、それはそれで作品全体のバランスが崩れてしまったかもしれないと思うので、難しい所だと思います。
そういう意味では、山田孝之さん演じる編集の服部さんなんかは、リアルな編集の人を意識した役作りだったなと思います。
原作の服部さんって、ザ・漫画のキャラクターって感じなので、当然と言えば当然なのだろうけど。
ストーリーについて
ストーリーは最高と秋人がジャンプの連載にこぎ着け、最高が過労で倒れて連載が休載になる辺りまでを色々と飛ばしながら描いている。
恐らく時間的な制約のためなのだろうが、最高たちの初めてのジャンプ連載作品が変わっている。
原作では2人のジャンプ初連載作品は「擬探偵TRAP」だったが、映画では原作でも読み切り作品として登場した「この世は金と知恵」が読み切りで好評だったため連載という流れに変更されている。
また、「この世は金と知恵」の人気が落ちてきたときの打開策として、亜豆をモデルにした女性キャラを新キャラとして採用しているところも映画ならではの変更点かな。
新妻エイジの王道漫画に対して、自分たちは邪道でジャンプの1番を狙うというのは原作通りの展開だったが、その邪道をどうやって新妻エイジにも勝る武器にするかというところが原作における1つのポイントだったと思うのだけど、悲しいかな映画の2時間という枠の中でそれを十分に表現するのが難しいというのは分かる。
ただ、せめて「擬探偵TRAP」を捻り出す所までは持って行って欲しかったなと思う。
「この世は金と知恵」という邪道丸出しのタイトルの漫画がジャンプで連載されるというイメージがあまり湧かないからだ。
ただ、最高が倒れるシーンは実写の方がリアルを感じ、より週刊誌で連載を持つという事がどれだけ大変なことかを感じさせるものであったと思う。
その辺りのリアリティーはやはり映画の方が表現方法として説得力があるなぁと感じた。
ただ、リアリティーを表現しようとするなら最後の休載取り消しはちょっと納得出来ない感じもする。
いや、分かるんですよ。
あそこで原作通り、休載の取り消しが無かったら映画として着地点が消えてしまうことはね、頭では分かるんです。
ただ、もし本当に映画のような事が起きて、編集長が休載だと決めてしまったなら、絶対にその決定が覆ることは無いと思っちゃうんですよね。
まあ、映画なんだから細かいこと言わなくて良いんだ、というのは頭では分かってはいるんだけど・・・ね。
映画の見どころ
原作のウリの1つは、理屈っぽい所だったように思う。
どうすれば、ジャンプで連載が取れるのか、どうすれば新妻エイジの漫画に対抗できる漫画を描く事が出来るのか、自分たちには何が足りていないのか、何が必要なのかをとにかく最高と秋人の長い理屈っぽい話し合いで表現してきた。
ただ、漫画と同じ事を映画ですると物凄く地味になってしまう。
そこで映画では漫画を描くシーンをアクションで表現したのだ。
プロジェクションマッピングを使ったのか、あるいはCGなのか、素人では分からないが、最高が漫画を描いているシーン、背景に漫画のコマが次々と映るシーンは視覚的にもポップでインパクトがあった。
また、「この世は金と知恵」の連載がスタートして、アンケートによる人気順位を新妻エイジと争っているシーンはバトルシーンで描かれている。
このシーンは本当にカッコイイ。
巨大なペンを持って空中に漫画のコマを描き相手に投げつける。
相手から投げられてくる漫画を避けながら、自分たちの漫画を描き、さらに相手にそれを投げて攻撃する。
ただ机に向かって漫画を描く絵をとるのではなく、ある意味で、漫画家は漫画を描きながら他の漫画家と人気順位を競って戦っているのだというのをアクションシーンによって表現している。
それがとてもクールで、楽しい。
それがこの映画の最大の見せ場だろう。
映画全体を通しての感想、まとめ
バクマンは漫画原作の映画としてはとても良いと思う。
役者さんは皆、演技のレベルが高いし、映像的にもアクションがあり見ていて面白い。
また映画のストーリー展開もそれなりにテンポが良い。
ただ、漫画としての原作に対して強い思い入れがある人には物足りない部分があるかもしれない。
この辺りは好みの問題だろう。
映画、実写版「バクマン」は映像として漫画の原作を見せるための工夫が十分に凝らされている。
ただ、それ故に漫画の持っている良さは殺されてしまっている部分もあるのは事実だ。
だけど、そもそも漫画と映画は異なるメディアな訳で、映画に漫画と全く同じ演出を求める事が間違いなのだと思う。
少し前だと、漫画原作の邦画=地雷みたいな印象があった。
しかし、佐藤健が主演で剣心役を演じた「るろうに剣心」以降、漫画原作の実写映画の中にも素直に面白いと思えるものが増えて来ていると感じている。
バクマンも面白いと言える映画だった。
ただ、映画と原作どちらが良いか選べ、と言われたら間違いなく原作と答えるだろう。
それでも映画を観る価値は十分あると思う。